

前回のポリミリの模様
日本外交政策学会の重要なミッションであり、定期的に実施している政策・軍事シミュレーション「ポリミリ・ゲーム」。
川上高司理事長の内閣官房参与就任期間に伴い、当学会は約1年の休眠期間がありましたが、今年より活動を再開。当初、第4回となるポリミリゲームは1月に予定されておりましたが、衆院解散のため中止となっておりました。
その後は特別国会会期中のため開催を留保しておりましたが、この度、2026年9月28日(月)に開催することとなりました。
ポリミリ・ゲームとは、政治家、外交・安全保障の専門家、実務経験者らが集い、日本(官邸)、アメリカ、中国、台湾などといった主要アクターに分かれ、特定の有事シナリオのもとで、どのような判断を下し、どのような対応・交渉を行うのかを実践形式で検証する政策・軍事シミュレーションです。
そこで導き出された結果は、日本外交政策学会としての分析・政策提言の基盤となる、極めて重要な知的成果でもあります。
■第4回ポリミリのテーマ
「台湾有事での新領域戦に日本政府はどう対処するか」

現サイバー攻撃が重要インフラを揺さぶり、偽情報が世論を分断し、正体を特定できないドローンが飛来する。ところが、ミサイルは一発も飛んでこない。部隊も上陸しない。宣戦布告もない。
それでも、国家の指揮機能、経済、国民生活、そして政府に対する信頼は、同時に削られていく可能性があります。
このとき、日本政府は何を「攻撃」と認定し、誰の権限で、どの法律に基づいて対処するのでしょうか。攻撃主体を断定できず、既存の事態認定にも当てはまらないまま被害だけが拡大するとき、政府は決断できるのでしょうか。
そして、「決定しない」という選択の代償を、最終的に誰が払うのでしょうか。
今回のポリミリが検証するもの
今回のテーマは、台湾総統選挙をめぐる局面を想定した「台湾有事での新領域戦」です。
レッドチーム(中国・ロシア・北朝鮮)は、武力攻撃事態の域を越えない範囲で、認知戦、経済的威圧、法律戦、サイバー戦、ドローン戦を段階的に仕掛けます。これに対し、ブルーチーム(日本・米国・台湾)は、それぞれの立場と権限に基づいて判断、交渉、情報発信、対抗措置を行います。
焦点は、攻撃側を軍事的に打ち破れるかどうかだけではありません。攻撃者を特定する証拠が十分でない状況で、日本政府が状況認識を共有し、法的根拠を定め、省庁を横断して一つの意思決定に到達できるかを検証します。
武力攻撃に至らない複合攻撃という「制度の空白」

政府の危機対応は、行政機関だけで完結するものではありません。官邸の危機管理を支える通信回線、消防指令システム、装備品の製造・保守など、その基盤の多くは民間企業の設備、人員、技術、契約によって成り立っています。
したがって、国家の指揮機能を狙う攻撃は、まず民間企業や社会インフラへの被害として現れる可能性があります。しかし、武力攻撃事態、存立危機事態、緊急対処事態のいずれにも明確に該当しない場合、政府はどこまで民間を保護し、どのような対抗措置を講じられるのでしょうか。
日本ではサイバー対処能力の強化や認知領域を含む情報戦への対応が進められています。一方、複数の攻撃手段が同時進行し、所管省庁、法制度、中央・地方、官民の境界をまたぐ状況では、個別の制度や組織を整備するだけでは解けない意思決定上の問題が残ります。だからこそ、実際の政策判断に近い環境をつくり、どこで判断が滞るのかを事前に検証する必要があります。
講演会では見えない「意思決定の過程」を検証する
ポリミリ・ゲームは、専門家が安全保障情勢を解説する講演会でも、あらかじめ用意された論点について意見を述べる討論会でもありません。
政治家、行政・安全保障の実務経験者、元自衛官、警察・海上保安庁関係者、専門家、研究者らが各チームの当事者となり、時間と情報が限られた状況で、刻々と変わる事態への判断を迫られます。米国チームと台湾チームも、日本政府に情報共有や立場の明確化を求めます。正解が示されないまま、各チームの判断が次の展開を変えていきます。
今回の検証では、特に次の4点を追います。
- 日本政府は事態認定を行ったか。行った場合、どの類型で、いつ、誰の判断によって認定したのか。
- 日本は訪台団を予定どおり派遣したか。それとも中止、縮小、延期を選んだのか。
- 攻撃の帰属(パブリック・アトリビューション)を公表したか。公表しなかった場合、その判断を分けたものは何か。
- 官邸、各省庁、日米、中央と地方は、最後まで一つの状況認識を共有できたか。
ゲーム直後だから明らかにできること――ラップアップ・プラス
ポリミリ・ゲーム終了後、その内容と成果を共有し、検証する公式報告会「ラップアップ・プラス」を開催します。
本会は、ゲームの勝敗や最終結果だけを説明する報告会ではありません。重要なのは、結論に至るまでの過程です。
- どの情報を信頼し、何を判断材料としたのか
- 誰の権限と責任で決定しようとしたのか
- 省庁間、同盟国・パートナーとの認識はどこで食い違ったのか
- 参加者はどの局面で迷い、何を決められなかったのか
- 想定外の展開によって、どの制度上・運用上の問題が表面化したのか
- レッドチームは、日本政府のどの弱点を突こうとしたのか
ゲーム直後には、参加者の判断の背景、迷い、緊張、認識の変化が、まだ鮮明に残っています。後日まとめられる報告書では整理の過程で失われてしまう「生の意思決定情報」に触れられることが、ラップアップ・プラスの最大の価値です。
ラップアップ・プラスで共有する予定の論点
- 日本政府チームの意思決定は、どの段階で進み、どこで停滞したのか
- 認知戦、経済的威圧、法律戦、サイバー戦、ドローン戦が連動したとき、既存の危機管理は機能したのか
- 攻撃主体を確定できないことが、事態認定、対抗措置、国民への説明にどのような連鎖を生んだのか
- 日本、米国、台湾の認識や優先順位はどこで一致し、どこでずれたのか
- 官民の境界、省庁間の権限、中央と地方の連携に、どのような空白が見えたのか
- 今後の制度設計、危機管理、政策提言に結びつけるべき課題は何か
表面的な結果だけを見ても、日本の危機対応力の実像は分かりません。本会では、ポリミリに参加した識者・実務家の分析を通じて、日本の統治機構が新領域戦に直面した際の可能性と限界を立体的に読み解きます。
登壇予定者
苫米地英人・日本外交政策学会会長
川上高司・日本外交政策学会理事長
そのほかポリミリ参加識者・専門家等
苫米地会長からは、認知戦や情報空間、国家戦略といった観点を踏まえ、今回のポリミリゲームを通じて浮かび上がった論点や課題について言及がなされます。
川上理事長からは、政策形成や安全保障の実務的視点に立ち、シミュレーション結果の位置づけや意味合いが整理されます。
この場で問うのは、日本が「戦えるか」だけではない
今回、レッドチームが狙うのは、単純な軍事的勝利ではありません。武力攻撃のレッドラインを越えず、日本政府が「何も決められない」時間をつくり、その間に世論、経済、外交関係を動かすことです。
問われるのは、日本に装備や組織があるかどうかだけではありません。証拠が不十分で、被害が民間に分散し、同盟国の判断も明確でない状況で、日本が自ら状況を定義し、国益に基づいて政治的意思を示せるかどうかです。
ラップアップ・プラスは、その問いに対する暫定的な答えを、シミュレーションの直後に共有する場です。安全保障を遠い世界の問題としてではなく、通信、物流、行政サービス、企業活動、情報環境と直結する自らの問題として考える機会となります。
■ 開催概要
日時:2026年9月28日(月)17:00〜18:30(受付開始16:40)
場所:衆議院議員会館(東京・永田町)予定 ※会場詳細は参加者のみに通知
対象:日本外交政策学会 会員限定(申込と同時に入会可)
参加費:20,000円
※参加費は、全額ポリミリの運営費に充てさせていただきます
※参加者には、本年6月5日に開催された「認知戦TTX」報告書を謹呈いたします
※非課税事業につき消費税は発生しません
■申込方法
お申込みは、以下のページから、機密保持契約に同意していただいた上、お名前(会員名)とメールアドレスをご記入ください。おって、支払い方法など詳細をご連絡いたします。
※締め切りは、2026年9月21日23時59分です

お問い合わせは、pr@jfpc.siteまで御願いします
